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「フロ-リング」って木じゃないの?

執筆者の写真: 中島桂一 一級建築士事務所中島桂一 一級建築士事務所

 一般的に木の床(フローリング)と言った場合には、大きく2種類の材料があります。

ひとつは化粧合板フローリングです。最近ではフローリングというとこちらを指すことが多くなってきました。もう一つは芯まで一枚板のフローリングです。合板に対して「無垢の板」とか「無垢の木」と呼びます。どちらも木からできている点は同じですが、性質はかなりの違いがあります。


 一枚の厚い木からできている無垢の床板は、乾燥過程や湿度の変化によって隙間が空く、反るなどの狂いが生じやすく扱いが難しい材料です。そこで、丸太を大根の桂剥きのように薄くスライスしてから、木目の縦横が直交するように重ね合わせて接着し厚くしたものが合板です。これにより伸縮や反りなどの狂いが少なくなります。それだけだと見た目が良くないので、表面にだけ木目のきれいな単板をはり、床板用にお化粧して加工したものが化粧合板フローリングです。


 化粧合板フローリングは狂いが少なくお手入れも簡単、さらに施工も非常に効率的なことから工期短縮やコストダウンにもつながり、主婦からも施工業者からも受け入れられてあっという間に普及しました。しかし、表面の化粧板は通常0.3mmしかありません。画用紙よりやや厚い程度です。

 薄いので傷が付いたり剥がれたりすると下地のラワン合板が露出して見た目が悪くなるため、プラスチック樹脂を木材組織内部に注入して固める塗装が施され強度を持たせています。

 その結果、木の持つ調湿機能や肌触り、適度な保温性や柔らかさが損なわれてしまいます。つまり、木でできてはいますが、木の特質はもはやほとんどありません。


 一方、無垢のフローリングは施工者にとって扱いが難しいだけでなく、住む人にとっても汚れやすくすぐにシミができたり、長い間には変色して黒っぽくなってしまったりと、常に気を遣うことが多く一時期は敬遠され、使われることも少なくなってしまいました。しかし、木材の科学的な研究が進み、室内環境や住む人に与える良い影響が明らかになるにつれて見直され、再び使われるようになってきました。同時に、乾燥技術の進歩や施工性の向上、「自然塗料」と呼ばれる植物由来のオイルが普及したことなどで、木の良さを損なわずに、施工の難しさや、汚れや変色などの短所が劇的に克服されてきました。

 無垢の木の良さは、調湿機能や適度な断熱性以外にもいろいろありますが、個人的には触感が最も好きなところです。家業が製材業であったため、子供の頃から木とのスキンシップに包まれて育ちました。しっとりとして滑らかで、冬はかすかに温かく夏はヒンヤリといつも受け止めてくれる。そして触れたとたんに微かに手が汗ばむような感覚。子供の頃、松の床板にほっぺたを擦りつけ、よだれを垂らして昼寝をした時の感触は、いつ思い出しても温かいものです。

 

 見栄えの良さやお手入れの気軽さを維持する目的なら、化粧合板フローリングは優れた建材です。しかし、室内の環境を整え、身体に対する負荷を減らし、感性を育むという観点、さらに長いスパンでメンテナンスを考えた場合は、無垢のフローリングがお薦めです。

 大切なのは単に「良い」か「悪いか」ではなく、設計者からのそれぞれの長所、短所の説明と、住む人の要望と理解納得、そして十分に打合せをした上での「適材適所」の使い分けだと思います。

住宅設計士 中島桂一著「家づくりの 本当はどうなの?」より





 2018年に出版致しました中島桂一著「家づくりの 本当はどうなの?」では他にも、30年以上住宅の設計と施工業務に関わってきた経験から、お客様との打合せの中でよく話題に上がる「家づくりの意外な真実」をいろいろ取り上げております。

 これから新築やリフォ-ムをお考えの方に、興味のあるところだけでも読んでいただき、家づくりの入門書、手引書としてお役立ていただければ幸いです。

 *詳細はこちらのペ-ジをご覧ください→住宅設計士 中島桂一著「家づくりの 本当はどうなの?」




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